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「プロジェクトの進行が佳境に入って息をつく間もなくなってきた」など、「佳境に入る」という言葉はビジネスでも使われる機会がある表現です。
「佳境に入る」とは日本の慣用句で、もともとの意味は「物語や演劇などのストーリーが、盛り上がって注目を集める場面にさしかかること」を表します。
「佳境に入る」と同じ意味で「佳境を迎える」と表現することもあるので覚えておきましょう。
「佳境に入る」に使われている「佳境」には「興味を感じさせるシーン」という意味があります。
「佳」という漢字の意味は「時期がちょうどいい」で、「境」の意味は「さかい」「区切り目」です。「佳」と「境」2つの漢字の意味が組み合わさることで、「物語などのちょうどいい区切り」という意味になりました。
「佳境に入る」という慣用句は、近年は意味が変化して、「一番大変な部分に入った」という意味で使われています。また、「アサリの漁が佳境に入りました」などのように、状況が最盛期や頂点にさしかかる場合にも使われるようになりました。
最盛期には忙しいことが多く、間違って「忙しい」という意味で使われることがあります。最盛期にさしかかる状況で使われる場合は、「忙しい」という意味だと誤解されやすいので、違いを理解して使いましょう。
「佳境に入る」に使われている「佳」という漢字には、「ちょうどいい時期」のほかに「めでたい」という意味もあります。いい意味がある漢字ですので、「佳境に入る」を不幸ごとに使うのは適切ではありません。「葬儀の進行が佳境に入った」など、不幸なできごとに対して「佳境に入る」を使うのは間違っていますので注意しましょう。
「佳境に入る」の由来は、4~5世紀頃にさかのぼった中国の逸話です。
東晋(とうしん)王朝の時代、中国の画家であった顧愷之(こがいし)は、サトウキビを食べる際、先の方から食べ始めていました。ある人にその理由を尋ねられて、少しずつ美味しいところへ進んでいくという意味で「ようやく佳境に入る」と答えたことから、使われるようになったという説が有力です。
「佳境に入る」は「一番大変な部分に入った」という意味で、会話の中でもよく使われる表現のひとつです。そこで、ビジネスでの「佳境に入る」の使い方を見ていきましょう。
「佳境に入る」がビジネスで使われる場合、「最盛期にさしかかった」という意味で使われることがあります。最盛期には仕事が重要な場面にさしかかっていたり、生産量が多く大変だったりすることが多いです。どちらの場合もビジネスにおいて重要なシーンで使われていることには変わりありません。
下記の例文のように、「佳境に入る」はビジネスが最盛期にさしかかった状況で使われます。
・プロジェクトが佳境に入って、残業続きだ
・工場での生産が佳境に入り、出荷業務も大わらわだ
・開発業務が佳境に入り、チェック作業の負担も増えている
・毎年年度末には工事が佳境に入り、休日をなかなか取れない
・秋になると果物の収穫が佳境に入り、へとへとだが満足感も大きい
以下は、「佳境に入る」の誤用例です。
・日常業務が佳境に入り、疲労困憊だ
・野菜の収穫が佳境に入り、休みがなかなか取れない
・開発業務が佳境に入っており、休日返上して作業している
「佳境に入る」を「忙しい」「大変だ」という意味で使うのは適切ではありません。しかし、「最盛期にさしかかる」という意味で使われているのか区別しにくい部分もあります。
どのような意味で使われているのか、意識して理解するようにしましょう。
「佳境に入る」には似た意味を持つ慣用句がいくつかあります。「佳境に入る」の代表的な類語を紹介するので一緒に覚えておきましょう。
「クライマックスを迎える」には「物語が最終場面を迎える」と「物語が最も面白い部分になる」という大きく分けて2種類の意味があります。このうち後者が「佳境に入る」と似た意味となります。
・物語はクライマックスを迎えた
・物語は佳境に入った
「クライマックスを迎える」は、横文字を使っていることから「佳境に入る」に比べビジネスなど堅い言い回しが求められる状況では使いにくい場合もあります。日常会話で用いるのに適した表現といえるでしょう。
「最大の見せ場」とは「物語や演劇などの流れで最も面白い部分になる」という意味がある表現です。「佳境に入る」と同じような状況で使われますので、一緒に覚えておきましょう。
・次のシーンが物語における最大の見せ場だ
・次のシーンから物語は佳境に入っていく
「ピークに達する」とは、物ごとの度合いが最も高くなる状況を表す言葉です。「佳境に入る」のもともとの意味とも、派生した「最盛期にさしかかる」という意味とも似ていますので、類語として言い換えられます。
・物語の盛り上がりがピークに達する
・物語が佳境に入る
「山場を迎える」はさまざまなシーンでよく使われる慣用句です。「物語などが最も盛り上がる時期に突入する」「一連の流れで最も面白いところになる」などの意味があります。使われるシーンが「佳境に入る」と同じですので、類語として覚えておきましょう。
・ドラマは次回、山場を迎えます
・ドラマは次回から佳境に入ります
「天王山」とは、「勝敗や運命の重大な分岐点」を表す慣用句です。天正10年に羽柴秀吉と明智光秀とが戦った「山崎の戦い」において、天王山を選挙することで勝敗を左右したことから、使われるようになりました。
・明日は準決勝といえども天王山といっていいだろう
・明日の準決勝でこのトーナメントは佳境に入る
物語などが佳境に入ることを英語でいうと、「reach the most interesting part」がよく使われる表現です。
このほかにも「佳境に入る」の英語表現には「enter the climax」や「interest deepens」などが使われることもあります。
「佳境に入る」とは、物語や演劇などが盛り上がりのピークにさしかかることです。もともとは芸術分野で使われていた言葉ですが、ビジネスなどさまざまなシーンで使われるようになりました。
由来は中国の古い逸話で、日本語としても長く使われています。また、「最盛期にさしかかる」という意味での使い方も一般に浸透しているので覚えておきましょう。
しかし、誤って「忙しい」という意味で使われることがあるので注意が必要です。社会人ならぜひ本来の意味を理解して、使いこなせるようになりましょう。
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